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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-6-16 和解

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 ここの家に足を踏み入れるのはいつ振りだろうか。

 いつ何処を見ても、完璧に手入れが行き届いているこの屋敷は、いつも完璧だった。
 でも、今日は何所かいつもと違うような気がした。

「奥様、どうなされたんですか?」

 
 

私にも判らない。だけど。

「ねぇ、ここってこんなに寂しい感じだったかしら。」

 完璧な筈の庭も、屋敷の外壁も、どこか以前とは違うような気がした。私のその戸惑いを察知したのか、糸帆さんは微苦笑した。そして。

「それはそうでしょうね。奥様がこのお屋敷を出て行かれた際、奥様付きだった使用人は全員辞めて行きましたから。それに庭師の方とも契約が更新されてない様で・・・。」

 その糸帆さんの話に、私は軽く目を見張った。

 私がこの綾橋の本宅に住んでいたのはほんの僅かの期間。それまでは別の一軒家に智と二人で住んでいたのに、私付きの使用人?流石はお金を持っている人の感覚は解らない。

 私の微妙な心境を悟った智や糸帆さん、紘人さんは、私に手を伸ばし、詳しい話は中でしようと私を促した。

 今日、私達がここに来た理由は一つ。

 つい先日、綾橋側の弁護士が紘人さんを通じて、和解を申し入れてきたからで、私としてはまだまだ和解出来るような心境ではなかったけれど、毎日のようにマンションに来られては、こちらが折れない訳にはいかなかった。

「さぁ、行きましょう。奥様。それに今は大切な時期です。身体を冷やすのは毒です。」

「・・・、そうだったわね。糸帆さんも今は大切な時期だものね」

 私が妊娠3ヶ月、糸帆さんが2ヶ月。つまり私と糸帆さんは妊娠初期に当たる。

 紘人さんと糸帆さんは既に入籍を果たしていて、紘人さんは完全に咲田性を捨てた。その報告を受けた際、智は少なからず寂しげにしていた。

 どうやら、数いる親戚の中で、ある意味、裏表なく智に接してくれたのは紘人さんだけだったようで、その従姉妹でもある紘人さんが咲田を捨てると言う事は、綾橋を見限った事だと、智は思ったらしい。

 来客を知らせるベルを躊躇いなく押した智の後ろで、糸帆さんは何故か急に顔色を蒼褪めさせた。それに気付いた私が、どうしたのかと糸帆さんに問いかけようとした時。

「お待ちしておりました、奥様、旦那様。」

「元気そうで安心しました。川幡さん。」

 実質、綾橋家の内情を取り仕切る川幡さんの登場に、私の意識は強制的に引き戻された。だけどそれもほんの僅かな間だけで。

「糸帆、お前は私に何か言う事はないのか?」

「ご、ごめんなさい、お父様・・・。」

 今、糸帆さんは何と言いました?お父様と言いませんでしたか?それともこれは私の聞き間違いですか?
 どうなんですか?

 はくはくと、口を開いたり閉じたりを繰り返す私に、紘人さんはしれっとした態度で、川幡さんに頭を下げた。

「ご無沙汰しております、お義父さん。」

 み、認めた。認めちゃったよ?って、事は。

「ねぇ、糸帆さん。」

「はい、何でしょうか。奥様」

 私の信じられないと言う感情がありありと籠った声に、糸帆さんは申し訳なさそうに応じてくれた。
 
 もう、確かめなくても判っているのに。なのに私は。

「やっぱりいいわ。今聞いたら、お腹の子、ビックリしちゃうかも」

「・・・、私もそう思います。」

 二人でお腹に手を当て、深く追求するのを諦め、私はその家におおよそ半年ぶりに、足を踏み入れた。




 綾橋から申し入れられた和解は荒れた。

 何故なら綾橋の親族だと言う人達が何の断りもなくこの和解の場に同席し、私はともかくとして、智を侮辱したのだ。その内容はとても人道的なモノとは思えなくて、それに我慢がならなかった私が、熱いお茶をその親族達に遠慮など一切せず、ぶちまけたのだ。

『何よ、私をバカにするだけじゃ気が済まないの?それともそんなに会社が欲しいの?それともお金?名誉?栄誉かしら?まさか楽して巨万の富を得たいとか?――綾橋の親族が、聞いて呆れるわ。会社の実情も知らないで。』

 綾橋グループは、決して全ての会社が黒字ではない。
 それを入社以来から密かに知っていた私は、その場で、ほんの少しだけ仄めかした。

『私が綾橋の嫁に相応しいかって?別に私は綾橋の名前が欲しいから智と復縁したんじゃないわ。こんなに馬鹿にされるんだったら、来るんじゃなかった。和解ももうしない方がお互いの為なんじゃないかしら、智。』

 私の荒れ狂った言動に、智は一切の動揺も見せず、軽く頷いた。

 それに蒼褪めたのは智の血の繋がるお義父様達。
 お義母様とも呼びたくない人は、震え、利依さんはボロボロと涙を流し。

『俺は父さんたちが吉乃を認めて、俺の生き方も理解したくれてと思って、今日の和解に来たんだ。本当なら仕事だったんだが、その仕事を店長に無理言って休ませて貰ったんだが、どうやらそれも無駄骨だったようだな・・・。』

 帰ろうか、と、智の言葉に同意の眼差しを向けた時、お義父様はその場に爆弾級の衝撃を投下した。

『智、そして吉乃さん、どうか私達家族を許してくれ。智も会社に戻って来てくれないか。お前が料理の道を極めたいと思っているのも知っている。でも、今の会社は、既にお前以外を社長として必要としていない。グループの重役たちもお前が会社に復帰してくれると言うのなら、出来る限りの対応をすると言っている。』

 お義父様のいきなりの土下座に、智の揺らぎもしなかった瞳が一瞬だけ揺らめいた。それを見取った私は、智が迷っている事を知った。

 確かに智は料理人になってから良く笑う様になったし、人当たりも良くなった。それでもごくたまに、昔のクセの様に、パソコンに向かっている事もあったし、読む新聞も経済新聞のままだった。

 迷った人がいたら、押してあげるのも大切な役目。

 いつの日か、所長から聞いた言葉が、私の心と体を突き動かしていた。

『戻ってあげたら?智』

『吉乃・・・、でも、俺には・・・』

『戻ってあげなよ。戻ったって、料理は出来るよ?社長が現場で働いたら駄目だと言う規則はないんだから。』

 ね、戻ってあげなよ、と言う私の説得に智は悩んでいたようだったけれど。

 智はいくつかの条件を提示して、会社に復帰する事を提示した。

 その条件は綾橋一族にとってはとても辛辣なモノで、それを飲まない限り、和解も復帰もしないと言った智に、お義父様は何も言わず、その条件をすべて受け入れた。

 こうして、よく判らない内に和解は成立したらしく、智は会社の社長にふっきする事になった。
 

 でも、本当の和解は、私が無事に子供を出産してからだった。 
 
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