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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-6-9 吉乃という大切な人

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 「綾橋、平って女から電話だぞ。例の愛人か?」

 フライパンでパスタとソースを絡めていた時、洋食屋の店長が荒い口調で電話だと俺を厨房から呼び出した。

 

昼時は過ぎたとはいえ、まだまばらに客が出入りする時間。それでもなくてもこの店は地味に忙しい。


 取材も何も受けていないのに、どこから聞きつけてくるのか、他県からの客も来るので、常に店には人がいる。その事を初日に吉乃に何気なく言うと、「やりがいがありそうで良かったじゃない」の一言で、電話を入れてくる事は今までほぼなかった。

 店長から受話器を受け取りつつ交際中の元妻ですよ、とさりげなく言い直し、電話に出た。

『ごめんね、忙しかったよね?』

 珍しい事に、吉乃の声は弾んでいた。
 
 例の事件に巻き込まれてからは、どこか影を背負っていた風な印象は、この電話越しからは全然伝わってこなかった。そればかりか、妙に嬉しそうなその声は早く何かを言いたいと訴えていた。 

 基本、仕事中には絶対連絡をしてこない彼女が、今のこの時間にかけてくると言う事は、相当俺に伝えたい事があったんだろう。俺が話すように促すと、吉乃はそれじゃあ遠慮なくと言った風な口調で捲くし立て始めた。

『あのね、6年ぶりくらいかな、え?8年ぶり?とにかくそれくらいぶりに短大時代の友人と会ったの。だからね、折角だからご飯でも食べようって話になって、智の店って、個室ある?4人で予約入れたいんだけど』

 元妻の彼女は何気に人脈が広い。
 もし彼女が経営者だったのなら、俺との結婚はなかっただろう。

『聞いてる?私と灯と、万菜ちゃんと、智の4人だからね?』

 俺が返事をしなかったのが気に喰わなかったのか、彼女は幾分か声を尖らせた。それにちゃんと聞いてると返してから予約を入れても大丈夫か店長に確認してから返事をした。

『じゃあ、楽しみにしておくね。あ、智、仕事頑張ってね!!』

 電話を切って、やれやれと溜息を吐けば、店長がにやけた顔をしてこちらを見ていた。

「随分若いな。声だけ聞くと十代より幼く聞こえる時がある。」

「それ、彼女には言わないで下さいよ?彼女はそれを自覚してませんから。」

 化粧をして、漸く年相応の顔に見える彼女は、自分が童顔なうえに、更に声も幼いと指摘されては、今以上に傷付いてしまうだろう。

 せめて甘い声だと言うくらいに止めなければ。

「予約は良いが、個室か。ちっと高くなるぞ?」

 頭を書きながら、ホワイトボードに予約と書きいれる店長は、口調と性格はともかく、信頼は出来る。
 
「大丈夫ですよ。予約の時間まで働きますから。」

「べた惚れだな。御馳走さん」

 やってらんねー、とぼやく店長も異常な愛妻家だ。そして、彼の弟も同じく愛妻家予定である。
 
 本来なら16時で仕事は上がる予定だが、予約は夜の19時。今は14時過ぎだから5時間の暇はある。つまり、3時間の残業代で個室料金は充分賄える。

 彼女は俺に依存していると言うけれど、俺こそ彼女に依存している。

 彼女なしに、生きてはいけない。


 そう言った意味も含めて、彼女は俺にとってたった一人の、唯一の運命の相手。
 その意味を込めて結婚指輪に文字を刻んだのを、彼女は知らない。

「おら、新人。個室使わせてやるんだから働け。」

「はい、今すぐ。」

 店長の檄に返事を返し、俺は仕事に戻った。

 大切な彼女とその友人と、兄の娘との夕飯を食べる為に。
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