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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-5-15 乱入者③

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 ふつふつ、コトコト。

 静かなマンションの一室に響くのは、鍋が煮立つ音と、部屋を暖める暖房の音風だけ。

 私はそれに耐え兼ね、疲れて冷え切った体を温めるべくして、立ち上がろうとした。
 
 が。

「どうした?吉乃。」


 

 身体の力が抜け、立てなくなっていた私に気付いた智が、包丁を持ったまま近付いて来た。

 彼の頭に、包丁は危険だと言う思考は無いのだろうか。
 敵は私が追い払ったので、まずは包丁を置いてから私を心配して欲しいと思うのは、贅沢だろうか。

 私の視線が自分ではなく、自分の右手に向いてる事に気付いた智は、包丁を気まずげにダイニングテーブルに置き、私と視線を合わせる為に、膝を折った。

 こんな智は知らない。
 こんな穏やかで、優しくて、爽やかな智は知らない。

 優しいのは知っていたけれど、こんな風に接してくれる人だとは知らなかった。

 私の知らない智と知っている智が重ならなくなって、途端に不安になった。

 もしかして、私は未だ病院のベッドで寝ているんではないだろうか。
 これは私が見てる都合の良い幻想なのではないだろうか。
 ホントは・・・、

「泣く事無いだろう?これからは暫く二人でいられるし、寂しい思いもさせない。辛い事があったら、八つ当たりしても良い。蹴っても、殴っても良い。それで気が晴れるなら俺はそれを甘んじて受け入れる。」

 それが俺の出来る償い方で、今出来る精一杯の愛情の表し方だと言われてしまえば、私は泣かずには居られなかった。

 不安で、心細くて、一人の様な気がして。
 幸せになりたいのに、心が小さな幸せを中々素直に受け入られない。

「私で、良いの?本当に、後悔しない?いつか要らないって、捨てたりしない?」

 散々好きなようにされ、会社と一族のプライドを保つ為だけに、菜々宮の家から綾橋家に売られた私。
 居場所を求めては足掻き、見つけたと思えば失望され、蔑まれ。

「身体が智を受け入られなくなっても、捨てたりしない?嫌いにならない?癇癪を起しても、傍にいてくれる?」

 私のまるで駄々っ子の様な要求と質問に、智は苦笑を洩らした。

 それを見てやっぱり嫌われたんだ、飽きられたんだ、と、落ち込みそうになっていた私に智はバカだなとまた笑った。

「それを言うなら俺の方だ。吉乃が俺の全てを知っても嫌わないでくれるか、捨てないでくれるか、受け入れてくれるかの方が心配だ。吉乃を捨てたりなんかしない。嫌いにもならない。吉乃が傍にいてくれるのなら、抱けなくても良い。吉乃が嫌なら、このまま入籍しなくても、今すぐ俺が出て行っても良い。」

 だいたい、お前が行ったんだぞ?と、智は私を抱きあげながら、ソファーセットまで移動して言葉を紡いだ。

「夫婦が相応しいかどうかは本人同士の互いが決めるんだって。周りが決めるんじゃない、決めるのは俺と吉乃だ。父さんでも、母さんでもない。今、俺の前にいる『平 吉乃』と、『綾橋 智』だ。」

 労る様に抱きしめられ、まるで雛鳥を慈しむように慰められ、額に唇の感触がしたと思えば。

「怖いか?」

 ソファーに横たえられ、耳元で甘く囁かれた私は、幸せで甘い疼きを覚えた。
 熱に浮かされたように首を横に振れば智は嬉しそうに笑った。

 怖くない、嫌だとも思わない。
 あの男とも重ならない。

 触れるだけだから、と、智の甘い囁きに承諾の意を込め、目を閉じた時、その人は春の嵐の様に、突然乱入してきた。

 そしてその事で、私は智の過去の一部を知る事となる。
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