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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-5-8 父娘の縁

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 優しく頭を撫でられているのを感じ、まだ眠気でうとうとする目を意志の力で何とか押し開き、その手の主を見れば、穏やかで、それでいて嬉しそうで、安心したような顔の建川先生がいた。

 どうして先生がいるのだろう。
 それにどうして、そんなに嬉しそうなんだろう。

 私のその思考を読み取ったのか、建川先生は落ち着いた声音で説明してくれた。

「紘人君から全部聞いたよ。今まで大変だったみたいだね。」

「先生・・・、」

「やっぱり、今更父とは呼んでもらえないよね。」

 

少しだけ哀しげに建川先生が呟いた言葉に、私が理解するまで、少し時間が掛かった。そして理解するや否や、申し訳なさが込み上げてきた。

 先生には新しい家庭があり、家族がいるのに、私みたいな汚れきった人間に、また関らせてしまった。

「やめなさい、自分を責めるのは。それに自分をあまり卑下するのも良くない。」

 無意識に噛み締めていた唇に、節だったた指先が触れる。
 その指は温かく、私がずっと求めていた肉親の温もりだった。

「本当に君は私が困るほど、母親の香也乃さんにそっくりだね。性格も、考え方も、香也乃さんそのものだ」

 懐かしげに、愛おしげに細められる目は、それでも“私”を“私”と見てくれ、あの思い出したくもない菜々宮の父の様な感情は窺えなかった。

 それが解った途端、私は甘えるように瞳を閉じ、口だけで微笑んだ。

「だって、私は二人の娘だもの。そうでしょ・・・?パパ」

「・・・っ、父と、父親だと認めてくれるのかい?」

「そんなの、当たり前よ。ずっと、ずっと逢いたかったんだから。」

 幼い時から心の奥底で願ってきた日々。

 本当の両親なら、こんな事はしない。
 本当の両親なら、私を抱きしめてくれる。
 本当の両親なら・・・っ。

 あの男に身体を蹂躙されながらも、心が完全に壊れなかったのは、いつの日にか捜しだし、きっと逢えるだろう両親を思っていたから。

 それに、私が完全に壊れる前に私をあの家から助け出してくれたのは・・・。

「ねぇ、パパ。」

 その人を思い浮かべ、建川先生改め、実の父を下から見上げ、言葉を紡いだ。

「智に会ってみて、どうだった?」

 私のこの質問が意外だったのか、目を何度か瞬かせたが、ちゃんと彼は答えてくれた。
 その時の表情がかなり苦り切っていた事は、永遠に私だけの秘密・・・。

「彼は良くも悪くも私にそっくりだ。唯一の人以外、心から愛せないし、言い寄られても心は動かない。けれど身体は反応してしまう。違うんだ、この人は違うのに、と、解っていながら。」

 そこで一旦言葉を切り、深い溜息をつき。
 そしてね、と続けた。

「言葉が足りない、何と言って良いか解らない、愛し方が解らない、どうして、何故、と思いつめ、大切な相手を苦しめてしまうのも私とそっくりだ。だから正直、私としては紘人君みたいな子と、穏やかに、幸せな家庭を持って、幸せに暮らして欲しいんだよ。」

 それは親だからこそ、そう願い、思う事なのだろう。
 私も親になれたら、そう願うのかもしれない。でも。

「今すぐに智を心の底から許せるとか、愛せる自信はないの。でもね、やっぱり、私は智の傍にいたいの。だって、彼ってばパパにそっくりなんでしょう?離れていたって、いつでもパパを思いだせるわ。それに、私をあの家から救ってくれたんだもの。不器用だけど、確かに私を愛してくれていたんだもの。」

 私が“すみれ先生”と呼ばれるほど、すみれの花が好きになったのは、彼がデートの度にすみれを持ってきてくれたから。すみれがない時は、季節の花や、お菓子だった。

 言葉は無かったけど、私が食事を美味しそうに食べている時は、普段は無表情な顔が、少しだけ柔らかかった。食べたりないな、と思っている時は、さりげなく自分の分を何も言わず分けてくれた。

 冷め切っていると思っていた結婚生活の日々でも、記念日の日には、必ずその日の内には帰ってきてくれてはいた。

「だからね、もう少し、頑張ってみようかと思うの。今までは我慢して、我慢して、なんで?どうして?って思いながら、結局何も言わないまま聞かないまま壊れたけど、今度は真正面からぶつかってみようと思うの。それでもダメだったら、スッパリバッサリ諦めて、一人で歩いていく。」

 一度壊れたモノは二度と元の通りには戻らない。

 けれど、壊れたのなら、壊れたで、その壊れる原因となったモノを踏まえた上で、新しい関係を築き上げれたら良いなと思う。

 誰でも失敗や悪い処はあるのだし、それこそ【三度目の正直】で、今度こそ本当に幸せになれるかもしれない。勿論、幸せになる為に私も頑張るのだけれど。

 私の言葉を静かに聞いてくれていた建川先生は、そう、と穏やかに微笑み、熱が出て、そのせいで出た汗でベタつく髪を、長い指で梳いてくれた。

 そして。

「と、言うわけだから、もう一度だけ、君に私と香也乃さんの大切な愛娘を、もう一度だけ預ける。今度会う時にまた不幸なようだったら、二度と会わせないから覚悟しておきなさい。――娘を頼むよ?智君」

 話疲れて、白い闇に包まれていく私を見守りつつ、先生は、しっかりと智に特大で極太の釘を刺していた。

 着替えを家に取りに行き、病院に急いで戻ってきたばかりだった智は智で、しっかりとその忠告に頷き、先生と交替し、私が目覚めるまで傍に居続けてくれた。

 それを私に後日こっそりと教えてくれたのは、智に一緒に付いてきて病院に来ていた、あの女の娘の万菜ちゃんだった。
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