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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-5-5 孤独

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 息が苦しい、身体が冷たい、寂しい・・・。



 

 ゆるゆると重い瞼を上げ、瞳を開けば、ここにいる筈のない人がいた。

 どうしてだとか、久しぶりとか、逢いたかっただとか、そんな陳腐で安い言葉なんて思いつかなかった。
 感じたのは、思ったのは、【今更】と言う感情。

 三流ドラマか、ありがちな恋愛小説なら、涙を流し、抱擁を交わすシーンだろうが、生憎と今の私にはそんな思いは無い。

 私は視界に入っていた人から意図的に視線を外し、色々なチューブや管に繋がれた自分の身体を呪わしく思いながら、少しだけ動く手でお腹を撫でてみて、愕然とした。

(え・・・?)

 どうして真っ平らなんだろうか。さっきまでは確かにここで息づいていたのに。

 何度も確かめる様に撫でるが、結果は変わらない。

「どうして・・・?あの子は・・・?あの子は何処にいったの・・・?」

 可愛い、愛しい、私の最初で最後の子。
 欲しくて、欲しくて、本当に私の最後の希望だったあの子は。

「・・・、目が覚めたのか!?」

「ねぇ、何処にいったの?知ってるんでしょ?」

 目覚めたかどうかなんてみれば解るだろうに。そんな事も一々言わなければ解らないのだろうか。それより大切な事があるのに。

 問いかけた答えを待つ間、ピっ、ピっ、と、規則正しく鳴る心電図の音が、やけに耳に付く。

「良かった・・・。どうやら峠は越えた様ね?」

 失礼するわね、と、酷く安堵したような表情を浮かべた先生が、あの人を押しやるよう退かし、脈をとり、美しい笑みを湛えたかと思えば。

「良く頑張ったわね。子供は今回は残念だったけど、まだチャンスはあるわ。気を落さないで?」

 知らされた真実に、私の心は深い悲しみに襲われた。

 そんなのってない、そんな事、信じたくない。なんて、言えなかった。
 頭が、心が、感情を曝け出す事を拒否していたから。

 例え今、愛してると言われても、嬉しいなんて思えないし、思うワケもない。
 もし言われたとしても、私は返事を返さない。

 だって、今の私が必要としているのは・・・。

「済まない、吉乃。俺が、」

「何が、済まないの・・・?」

 そうよ。どうしてあなたが私に謝るワケ?
 あなたは私に何か悪い事でもしたの?
 違うわよね?
 なのに、どうしてそんな辛そうな顔で、何度も謝るの?

 ――本当に辛いのは、私なのに!!

 そう感じた途端、私は先生に無理を承知の上で、身体を起こして貰う様に頼み、少しだけと言う条件付きで起こして貰い、久方ぶりに智と向きあった。

 言ってやりたい事、伝えたい事があったから。
 だと言うのに、彼は本当に無神経で、相変わらずだった。

「ねぇ、なんでそんなに謝るの・・・?私はあなたを責めてなんかないのに。」

「吉乃、今回の事は、いや、これまでの事は、これから一生を掛けて、償うから、」

 ――償う。

 そう、そうなの。
 あなたは私に償わなければならないと感じ、思っている訳ね?
 でもそれはあくまでも、私に対してだけよね?

(そんなの要らないッ!!)

 子供を失った喪失感と孤独が混じり合い、ドロドロと黒くなっていくのを感じながら、私は鼻で嗤ってやった。(その時の笑みは、本当に恐ろしい程に凄絶だった。と、後に散々聞かせられる羽目になるほど凄かったらしい。)

「償いたければ、お一人でどうぞ?あぁ、それより私の事などもう忘れて下さっても良いんですよ?私なんか忘れて、ご結婚でもしたらどうです?」

「吉乃、」

「気安く、吉乃、なんて呼ばないで下さい。貴方の顔なんて金輪際、一瞬たりとも見たくありません。出て行って!!」

 一度破裂した風船は、二度と元のようには戻れない。
 いくら固めたとはいえ、砂で作ったお城は、波に呑まれてしまえば跡形なく消えてしまう。
 
 それと同じように私の心は乱れ、荒れていく。

 
 グッ、と枕を掴み、顔を狙って投げる。

 謝罪なんかいらない。
 償いも要らない。
 私が欲しかったのはそんなのじゃない。
 勿論、慰めなんかでもなかった。

 欲しかったのは・・・。

「あなたの、あなたなんかの子供なんて、孕むんじゃなかった。この人でなし!!」

 ただ一言、あの子に謝って欲しかった。

 守れなくて、ごめん。
 気付いて、助けてやれなくて、ごめん、と。

 私が手のつけようもないほど癇癪を起したのを見て、これ以上は危険だと判断したのか、先生は嘗ては私の夫であった人を、半ば強引に引き摺る様にして、部屋から出っていいた。

 後に残されたのは、絶望にくれ、涙を流し続ける私と、私が暴れた事でぐちゃぐちゃに乱れた部屋だけ。



 誰も知らない。
 一度絶望を味わった人間が、何を望み、どんな事をするのかを。

 だから、先生も私を一人にした。

 深い闇と、絶望と言う名の、奈落の底に落ちた私を一人だけを残して・・・。
 
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