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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-4-18 流れゆく命

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  その悲しくも残酷な報せが、綾橋家のお義父様の元へ届いたのは、私が失意と絶望の中で、病院で処置を受けている最中の事だった。





 「――少しだけお母さんの体重が少ないですね。ちゃんと食べてますか?食べる事もお母さんの大切なお仕事ですからね」

「少ないですか・・・、ちゃんとこれでも前より食べてはいるんですけどね。」

 女性とも見紛う男性医師に注意を受けながら、私は頭をこてんと、傾げた。

 前も言われたが、今回もだとは。

 あまりの結果についつい苦笑いが漏れてしまう。

 私は食べているのに体が太らない。いや、正しくはこれ以上太れないのだろう。

 胸だけはお腹の子の成長と共に徐々に大きくなるのに、身体だけは以前のように細いままで、肩がやけに凝り、腰も重い。

 そんな風にぐちぐち文句や不平不満を漏らす私に、先生は目をぱちぱちと瞬きさせ、魅力的な唇を吊り上げ、私の頭を撫でた。

「大切な時期なんだから、貴女は食べ過ぎても良いくらいよ。今は折角のクリスマスシーズンなんですもの。ご馳走でも食べてごろごろしてたらすぐに太れるわ。――良いお年を。」

 チュッと私の頬に軽く唇を触れさせた先生は、とにかく太れば特に問題はないと、私に充分な食事を摂る様に注意を促し、手をひらひらと振った。

 意味は『忙しいから出ていけ』である。

 確かに年末であるのに混雑しているここの産婦人科は、忙しいのだろう。
 これですばるちゃんの紹介でさえなければ、とっくに受診病院を変えているところだ。

(あれですばるちゃんの婚約者だなんて・・・、詐欺よねぇ~?)

 診察料を窓口で支払い、微妙な気分のまま外に出れば、雪が降り始めていた。

「ホワイトクリスマス、か。」

 今回のこの雪は、25日までの三日間、降ったり止んだりを繰り返すらしい。
 今日は初日の23日。
 そして、智の誕生日でもある。

 時計にふと目を向けたのは、ある事を思い立ったからだ。そして確認した時計は、出勤時間までかなり余裕がある事を指していた。

 年末年始は掻き入れ時で、何処の保育所も忙しい。
 故に半休を貰い、午後14時から出勤するように頼まれていた。
 本当は一日休みをあげたいのだけど、と、所長は眉を寄せていたけど、私はそれを断った。

 経験もない私を雇ってくれた上、複雑な家庭環境も聞かないでいてくれる。

 これ以上、所長の好意に甘える訳にはいかない。

「よッし、」

 頬をパチンと両手で叩き、自分で自分に喝を入れ、バスに乗り、デパートまで行った。

 本当は今日は智と二人で過ごす筈だった特別な日。
 それを自分のせいで果たせない約束になってしまったけれど、せめてプレゼントだけは。

 あの秋の日の遠足の日、視線があい、睨まれた私はショックで倒れた。
 そこで改めて私は自覚した。
 ショックを受けるほど、まだ智を愛しているのだと。

 智はもう私の事を好きでもなく、嫌いでもないかもしれないけれど、私はそれでもプレゼントを贈りたいと強く思った。

 デパートに着いた私は、予め目をつけていた商品を買い、配送を依頼する為サービスカウンターに行き、そこで少し困ってしまった。

 それは配送依頼書類の配送依頼主という記入欄だった。

 戸惑い、どうしようかと思っていた私は、覚悟を決め、お義父様と恐らく川幡さんと糸帆さんだけに通じる名前をそこの欄に書き込み、配送料を払おうとしたところで店員に声を掛けられた。

「よろしければ、本日中にお届けいたしますが、如何なさいますか?」

 その言葉に良いのかと聞けば、丁度そちら方面にキャンセルが出たのだと言う。
 私はその言葉に甘え、お願いすることにした。

「何かお伝えする言葉はございますか?」

「では、誕生日おめでとうございます、それから約束を守れなくてごめんなさい、と。」

 私のその言葉に、何かを感じ取ったのか、店員さんは確かにと真剣な眼差しで頷き、引き受けてくれた。

 それを見てホッとした私は、昼食と夕飯の材料を買う為に、地下食品売り場に行く為に階段へと向かった。

 だけど、それがいけなかった。

 お客さんの殆んどがエスカレータ―とエレベーターを使う為、人気のまばらな階段。
 私が階段を使って階下へ降りようとした時は、誰もいなかった。
 それはまさにあの人にとっては、神の天啓ともいえるチャンスであり、瞬間でもあっただろう。

 常ならば気を張り、周囲に気をつけていただろう私も、クリスマスの雰囲気に浮かれていて、黒い思惑に少しも気付かなかった。

 気付いた時には、ドンっと、身体を背中から思いっきり押され、突き落されている途中だった。

 ゆっくりと落ちていく身体に、腕から外れ、散らばって行く鞄の中身。
 ただただゆっくりと、それでも玩具のように呆気なく落ちてゆく自分の身体。

 待って、助けて、ウソでしょ、一瞬にして、いろんな言葉が頭の中を掛けめぐり、通り過ぎて行った。

 そして。

 ぐしゃっと、嫌な音が聴こえた。

 骨が折れただけならいい。
 でも。

「お客様、大丈夫ですか!?お客様ッ。誰か、救急車を!!」

 脚の間に感じる、ヌルついた液体の感覚に、微かに感じる鉄くさい香り。
 じくじくと痛む下腹部。

 それは間違いなく・・・。

「嫌ぁーーーっ!!」

 流れゆく命の事実を受け入れたくなくて、私は大きな声で叫び続け、涙を流し続けた。
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