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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-4-17 崩壊の時

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 (あなた・・・、どうしてなの・・・。)

 膨大なジュエリーデザイン画に紛れ、今、自分の机の領土の殆どを占めている写真は、愛し、愛されていると信じて疑わなった人の裏切りの瞬間の写真。

 あの人と一緒に写っている女性は、自分との間に生まれた娘と同年代くらいの女性。

 

 おかしいと思い始めたのは、あの子と吉乃さんの離婚が正式に決まったと、紘人君から聞かされた後くらいから。

 日に日に遅くなる帰宅時間に並行するように、私を見なくなったあの人の瞳。

 こんな事は結婚してから初めてだった。
 お見合い当日でさえ、あの人は私を正面から見ていてくれたのに。

「奥様、旦那様からご伝言が。夕飯はいらないとのことです。」

 怒りと悲しさと遣る瀬無さで、ふるふると身体を震えさせる私を、更なる境地に突き落す言葉を伝えに来たのは、吉乃さん付きだった、確か糸帆さんと言う名前だったメイド。

 彼女は吉乃さんを敬愛していて、彼女が家を出て行った後などは、感情を失ったかの様のに、笑わず・泣かず・喚かず、人間を辞めてしまったかのようだった。

 それが以前の彼女のように戻ったのは、10月の下旬の頃だった。
 もっと詳しく言えば、あの子、――智と吉乃さんの結婚記念日で、最近では率先して執事の川幡さんと交互に、保育所に万菜と言う子供を送り迎えをしている。

「奥様・・・?」

「・・・っく、」

「・・・・・・!!」

 私が涙を流し、何も言葉を発っさなかったのを不審に思ったのか、彼女は机の傍に近づき、落した視線の先で息を飲んだかのように、一瞬、呼吸を止めた。

 動揺を必死で押し隠そうとする彼女の気配に、私は顔を上げて、彼女を正面から見据えた。

「あなた、知ってるのね?そうなんでしょ!!この人の事知ってるのね?」

「ぞ、存じません。私は、何も・・・」

「嘘おっしゃい!!」

 ぐしゃりと、握りしめた写真が、私の右手の中で醜く歪んでいく。
 そのよう椅子を震えながら、そして何故か悲しそうに見つめながら、彼女は尚も知らないと必死に言い張った。

「本当です。私は、その御方の事は、全く存じ上げません。」

「嘘よ。あなたは知っている筈だわ!!」

 ガシャンと、机の上に置いてあったランプが、写真を薙ぎ払った時に一緒に落ちたらしく、独特な音を立て、割れた。

 知っている筈なのだ。
 彼女はこの女の正体を知っていて、それでも知らないと嘘をつき、隠している。
 なのに、どうして・・・。

「とにかく、私は知りませんので、」

 知らない、見た事もないと繰り返す彼女に激しい怒りが湧きたった時、新たな人物が割って入った。

「糸帆さん、ここでしたか。」

「紘人さん」

 硬質な印象を与える銀縁の眼鏡を掛け、薄手のコートを羽織り、携帯を左肩と左耳に挟んだ青年、――紘人君が、糸帆さんを見つけるなり、まるで私から庇う様に自分の胸元に引き寄せた。

「失礼、彼女をお借りしても?」

 ちらりと床に落ちている何枚もの写真に目を落した紘人君は、苦り切った表情を一種浮かべた後、明かに軽蔑と侮蔑に満ちた眼差しを私にむけてきた。

 そして。

「堕ちましたね、綾橋の総帥でもあらせられる方の奥様とは、到底思えません。本質も見抜けなくなるとは・・・、あなた方はこのままでは、本当に守るべき人達を見失ってしまいますよ。糸帆さん、行きましょう。こんな処で貴重な時間を潰していては、奴らに逃げられてしまう。」

 本家に対して、反旗を翻したとも思える彼の言動に、更に頭に血を昇らせ掛けた時、彼は止めを刺すように私を鼻先で嗤った。

「所詮、貴女もこの腐りきった綾橋の傀儡ですか。写真の彼女の本質をも見抜けずに、何が【綾橋を変えてみせる】ですか。貴方も跡取りの御曹司もそうですから、あの方は壊れた。いえ、自由を求め、解放への道を自ら切り開き、飛び立ったんです。」

 冴え冴えとした鋭い眼光は、私を、この家を、確かに嫌悪していた。

「あぁ、利依さんとの婚約の件ですが、辞退させて頂きます。私も今日限り、こちらのお屋敷には足を運びませんので。では糸帆さん、行きましょうか。」

 荷物は運び終えましたので、と言う彼の言葉で、漸く家の中がいつもと少し違う事に気がついた。

 窓から眼下を見下ろせば、海藤グループの引っ越し業者が、次々と段ボールを積載している所だった。
 それを意味しているのは・・・。

「あの荷物は・・・?」

「この屋敷に不必要なものです。お気になさらずに。もうこのお屋敷に戻って来る事はありませんので」

 紘人君のその言葉に、ガラガラと何所かで音を立て、なにかが崩れ、壊れていくような気がした。
 そしてそれは間違いなく、何かが壊れた瞬間でもあった。

 最後に紘人君は本当に忌々しげに私を見て、糸帆さんの手をぎゅっと握ると、荒々しい足取りで出て行った。

 
 この時、感情に左右される事無く、真実を見極め、彼の忠告に耳を向けていれば、違う未来が待っていたのに、私は、私達は、誤った道を選んでしまった。


 それが悪魔の様な彼女の思惑とも知らずに・・・・・。
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