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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-4-10 事務室で・・・①

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 * 
 
 ――翌日。


  私は何をしているんだろう・・・。 




「すみれ先生、ごめんなさいね。助かるわ」

「いえ、気にしないでください。私、こうゆう作業、大好きですから」

 そう微笑み、言葉を掛けてくれた先生に返事を返してから、また項垂れてしまう。

(私って、こんなにお人好しだったかしら?)

 今、私は、一時間前から自主的という形で、ここの保育所の情報を書いた【ひなた通信】を、読みやすい字を心掛け作成している最中で、もう少しすれば完成と言うところまできている。

 昨今、パソコンで作るのが主流となっている中、ここの施設はあえて手書きに拘っている。
 だからか、ここに勤めている人達は、総じて書体が美しく、また、読みやすい。

 私は出勤初日、それを知らされた時、思わず本音を漏らしてしまった。

 それを聞いた他の先生たちは『確かにね』と、肯定してから、それでもこの方法は辞めないと強い言葉で断言した。

 ここの保育所は認可されてはいるけれど、個人が経営している施設で、法人ではない。
 法人のやり方を否定する訳ではないが、機械で打ち出された手紙を見ても、味気がないと思うから手書きにしているのだと。
 それに文句がある人は辞めてもらって構わないと、所長は笑顔で言い切った。

(確かに少し前まではみんな手書きで、温もりがあったっけ。)

 機械化が進む中、携帯も一人一台が当たり前になってきた今だからこそ、逆にそれが良いのかもしれない。
 
 現にここの保育所は人気が高く、近くは乳児園兼児童養護福祉施設として稼働を始める事を考えているらしい。
 
 そうなれば、私も更に忙しくなると、先生達に言われた。

 

 ずずずっ、と、そんな事を思い出しながら、飲む食事を摂っていた私に、こにっちゃん先生こと、小西先生が、呆れ果てたような眼差しを向けてきた。

「すみれ先生、まさか、それで食事は終わりだなんて言いませんよね?」

「え?ダメですか?お腹空いてないんですけど・・・」

 私のこの発言はダメだったらしく、すぐさま他の先生達からダメ出しを喰らった。

「すみれ先生はただでさえ小食なんですから、栄養を考えつつ、尚且つ、色々な種類を食べなきゃダメです。」

「困りますねぇ~。将来の園児の栄養管理をして貰わなければ」

「あっ君先生はそればっかり!!でも、赤ちゃんの為にも食べて下さい。栄養取って下さい。特に鉄分とミネラルと程々に良質なタンパク質。ストレスもいけません。適度な運動もお勧めします。痩せすぎもダメですが、太りすぎもダメです。靴は踵が高いのは禁止です」

 怒涛の言葉の羅列に、頭はくらくらしたけど、その言葉は私を心配してくれての事だったから、嬉しくて、頬が緩んでしまった。

「ダメですよ、笑って誤魔化しても。先生方、食べず嫌いのすみれ先生に愛の鞭を」

 小西先生のその言葉に、部屋にいた先生達が、それぞれ私の机の上に食べ物や飲み物を置いた。
 その中には、酢昆布や、乾燥ワカメと言ったおつまみ系おやつもあった。

 でも、その中でどうしても一つだけ受け付けない物があった。

「こにっちゃん・・・、コレ、食べられないからあげる」

「え?すみれ先生、チョコレートダメなの?」

「えぇ。カカオアレルギーでね。チョコレート系のお菓子とか、ココアは飲めないの。最近調べて判ったんだけど・・・」

 あの二ヶ月弱の入院生活の中で、色々な検査をした。
 その時判明したのが、カカオアレルギー。

 確かにチョコレートを食べていた時は、身体の何処かが痒かったりしたけど、食べないようになってからはそんなことも無い。

 チョコレートは大好きだったが為に、結構辛かった。

「ごめんなさい、あっ君先生。」

「アレルギーですから仕方ないですよ。それに本当はチョコレート、好きでしょ?」

 飄々と語るあっ君先生こと、斡嶋 未来《あつしま みき》先生、28歳は、チョコレートを食べながら、にこっリと意地悪気に微笑んだ。

「・・・、あっ君先生は意地が悪い。」

 思わず呟いてしまったその言葉に、ピシリと、空気が凍ったような気がした。
 他の先生たちは、その空気を感じ取った瞬間、笑顔を引き攣らせた。

「踏んじゃったね、すみれ先生。」

「踏んだな。アレは」

 ひそひそ、こそこそ交わされる会話は私に聞こえるはずもなく、私は無頓着に言葉を続けた。

「でも、それがあっ君先生なんですよね。すばるちゃんはボーイッシュだし、こにっちゃんはむちむちでふわふわで、甘そうで、美味しそうで・・・」

「・・・っ、」

 ぷっと、誰かが吹いたような音がして、そちらに目を向ければ、所長の美苑 桐子《みその きりこ》先生、年齢不詳、が、お腹を抱えて、肩を震わせていた。

「どうしたんですか?所長」

「いいえ?すみれ先生、貴女、天然だって言われてなかった?」

 まだ震えが止まらないのか、美苑先生の声も震えていた。

 しかも、よりによって人を天然扱い。

「言われてません!!無自覚だとは言われてましたけど!!」

「ほら、やっぱり貴女は天然よ。こにっちゃん、良かったわね、すみれ先生が女性で。すみれ先生が男性だったら、貞操が危なかったわよ」

「失礼な、こにっちゃんは襲いませんよ。私が男性だったら襲うのは、すばるちゃんです!!」

 そう。間違いなく私が男性だったら、すばるちゃんを選ぶだろう。
 こにっちゃんは、あくまでも、妹の様に、お姫様みたいに、たまに抱き締めるだけでいい。

 私が恥ずかしげも無く、熱く力説すると、こにっちゃんは、顔を赤く染めたまま、私のお腹を見て、口を開いた。

「ありがとう。それより、お腹の子のお父さんは、赤ちゃんの事、知ってるの?」

「いいえ?多分知ってるのはお義父様と彼の従弟で私の弁護士だった二人と、病院の関係者だけ。あとは、ここの関係者だけだと思う。」

 離婚してしまったのだから、教える必要はない。

 血縁上では智の子供にはなるだろうけど、私はシングルマザーの道を選んだのだから、智には教えない。
 それに智は、私の事を忘れ、既にあの女とやり直しているのだから・・・。

 私のその発言で、暗くなりかかったその場の空気を吹き飛ばしたのは、やっぱりと言うべきか、流石と言うべきか、普段から癒し担当の長沼 漣《ながぬま れん》先生、32歳だった。
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