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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-4-5 小さな声①

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 どうして神様は私を放っておいてはくれないのだろう。





  お腹を撫でながら、段々と落ち着いてきた私の様子を見計らい、尚が温かい飲み物とブランケットを、由貴君から窓越しから受け取り、庭に置いてある白い椅子に私を座らせた。

 その白い椅子は全部で五脚あり、みんなで座れるように揃えたモノで、その白い椅子が囲むようにしているのが、同じデザインの丸いテーブル。

 作りとしては、イギリスの庭園に置いてありそうな優雅なデザインでいて、気品があり、なおかつ、新しさも併せ持つ家具。

 いつもはここに座れば気分が浮き立つのに、今日は何もときめかない。
 
 そんな私に気付いてるのかいないのか。
 
「ねぇ、聞いても良い?」

 尚に促されるままに椅子に座り、ぼんやりと空を眺めていた私に、幾分か遠慮してるのか、尚が小さな声で私のお腹を見ながら聞いて来た。

 私はそれに『是』と答え、頭をゆっくりと上下させた。

「お腹の子の父親って誰・・・?」

 まさか、私の知ってる人・・・?と、不安げに聞いてくる尚に、私は無意識の内に儚い笑みを浮かべ、肯定とも否定ともいえない答えを口にした。

「この子の父親、つまりは、私のついさっきまでの夫だった人はね、尚の採用が決まった会社の社長で、綾橋の次期総帥になる人なの。」

 そして、自分もそこの社員だった。

 そう、あの日までは、私は智の妻で、社員の一人だった。

 けど、今日からは違う。
 今日からは全くの他人であり、知り合いですらない。
 無関係で、知らない人間になる。

 妊娠している事を知っているのは、病院側の一部の人達と、紘人さん、お義父様の宗梧《そうご》さんと、ここで一緒に暮らしている人達と、職場の人達くらい。

 あの日以来、私は智の顔も見ていなければ、様子も聞いていない。

 疲れたと言ったのだから、関り合いたくもないのだろう。
 ならば、私も出来るだけ無関心でいようと決めた。

 良く、『愛情の裏返しは憎悪だ』と、言う人がいるけれど、実際は無視・無関心だと思う。 

 憎悪であれば、心にもまだ存在できる。だけど、無視や無関心であれば、心には残らないし、引っ掛かりもしない。

 全くの無だ。 

「・・・、なんで、別れたの?社長さん、あんなに完璧で、カッコイイのに。」

 採用通知をぐしゃりと握り絞めた尚は、理解出来ないとその真直ぐな眼差しで語っていた。

 それに少しだけ笑って、私は眼を伏せた。

「そうね・・・。あの人は完璧で、容姿も優れていて、全てが申し分がなかった。女性にも苦労してなくて、実際、白い結婚期間の間には、何度も朝帰りや浮気の証拠も見つけた。でも、それでも離れられなかったのは、あの人が好きだったから。必要だったから。」

「それなら・・・っ、」

 私は尚の言葉を視線一つで奪い、醜く嗤った。

「『疲れた』って、言われたの。私を愛するのが。家族としてやっていくのが疲れたって。あんなに完璧な人が、すごく疲れた顔をして。最後に見たあの人の顔は、私を完全に拒絶したものだったわ。」

 あんなに歪んだ顔は、今までも見た事がなかった。

 今思えば、あの時に私は決めていたのだと思う。

 あれ以上智に嫌われるくらいならば、私から逃げてしまおうと思ったのは。
 嫌われたくなければ、離れてしまえと。

 私は私の身勝手な欲望の為に、智の籍から自分の籍を抜いた。

「だからね、別れたの。信じられないなら、これを会長に渡す序に聞いても良いわよ」

 そう言って、私が鞄から取り出したのは、一通の封筒。

 この中には新しいい携帯の番号と、アドレス、住所と勤め先等が書いてある手紙が入っている。

 本当は自分で渡した方がいいと思っていたのだけど、無関係になると決めた以上、やたらと智の周囲をうろつくのは良くないし、気持ちが揺らいでしまうかもしれない。

 暫く私と封筒を見ていた尚は、はぁ~っと、思いっきり重い溜息を吐いてから、その紅い口唇を吊り上げて笑った。

「ありがとう、話してくれて。私は吉乃を信じる。――これは明日にでも会長に渡しておくわ。良かったわね、私が秘書課採用で。」

「えぇ。流石だわ。尚。」


 お互い顔を突き合わせ、笑い合っていた時、その小さな声は私の耳に届いた。
 
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