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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-3-2 襲来③

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 ぐるぐると回る世界に、視界。
 モヤモヤとする聴覚。
 
 感じられるのは、立ってられないくらいの眩暈と、気持ち悪さと、自分の不甲斐ない身体へ対する嫌悪感。

 

 そのあまりにも酷い眩暈に立ってられなくなった私は、傍で私の身体を支えていてくれていた千代田さんに凭れ掛るようにして、姿勢を崩した。

(あぁ、やっぱり・・・。)

 悲しいけれど、私の病状は良くなる処か、悪化の道を歩んでいるとしか思えない。
 なのに、どんどん冷えていく身体に反し、身体の内側は必死に生きようと熱くなる。

 苦しい呼吸に、乱れる鼓動。

「センパイっ!!菜々宮センパイ、大丈夫ですか?しっかりして下さい。誰か、社長を呼んでっ!!」

 いつものぶりぶりの甘え、媚びった千代田さんとは正反対の様子に、私がいた部屋は、一気に騒然となった。

 そんな中、私はと言えば、身体は苦しい、助けてと訴えているのに、頭と理性は急速に冷静になりつつあった。
 
 そう、それはきっと、彼女が見えたから。

 虚ろになりつつある意識を、強引に覚醒させ、ぐるぐると回る視界を定め、顔を上げる。

 そして、目に飛び込んできたのは。


 艶々とした髪が綺麗にセットされ、大きく咲いた薔薇を思わせるかのような笑みに、男性ならば、その完璧で妖艶な肢体を抱きたいと思わせる、かつての智の恋人と思われる、あの女。

「あら、何か言いたそうねぇ~?」

 私の刺すような視線を感じ取ったのか、それとも最初から私をバカにしに来たのか、あの女は、当然の様に「返して貰うわよ。」と笑った。

 気持ち悪くて、気持ち悪くて、何も言えない私を、あの女は、侮蔑と蔑みの含んだ眼差しで、毒を放ってきた。

「貴女、そんな身体で綾橋の跡取りなんて産めるの?私、知ってるのよ?貴女が子供を産めないの。だから、私が代わりに産んであげる。あなたは所詮、私の代わりだたんだから。」

 ――コツン、コツン。

 私の方へ、確実に近寄ってくるヒールの音。

 そしてついに、その足音は私の手を踏むという暴挙で止められた。


 手の甲に走る痛烈な痛みに、顔が歪む。

(どうしてこんな人が・・・。)

 人を人とも認めない、人を蔑む事しか知らない冷たい瞳の女、城花 万季《たちばな まき》。
 
 そんな女と、どうして智は交際していたのだろう。

(私しか好きじゃないって、言ってたじゃないっっ!!)

 ドロドロと、私の中でとぐろを巻き始める黒い靄。
 それを助長させているのは、こっそりと私が調べて、得た情報。


 ――城花 万季と、綾橋 智の間には、一人の児女が産れている・・・。――


 誰も知らないし、智だって知らない秘された事実。

 それを私に教えてくれたのは、あの女と付き合いがあると言った女性。
 彼女は、興信所の前で、右往左往していた私を見かけ、声を掛け、話を聞いてくれた。
 とても、あの女とは縁がなさそうな人だった。
 

 私が無反応だったことに腹を立てたのか、彼女は私の髪を鷲掴み、無理矢理顔を上げさせ、私を侮辱した。

「ふん、智ったら、何処が良かったのかしら。こんな子供みたいな貧相な女」

 合せられた視線に、私は驚いた。

 彼女には人としての、他者へ対する、情愛や慈しみの感情が欠片もみられなかった。
 
 その酷な事実に、あの悪夢の様な日の事をゆっくりと思い出してみる。


 そんな私の傍で、千代田さんが私の代わりにあの女に必死に応戦していてくれていた事を、私は後に知った。

 
 あの女、――万季が連れていた女の子は、4歳児にしては、その年齢にそぐわぬ、随分と小さい身体付きだった。

 もしかしたら、彼女は子どもを愛せないのかもしれない。そればかりか、智の大切な家族も。

 その思いが私の中で生れた時、私が思い、感じたのは。


【あなた、本当に諦められるの?】

(だって、私じゃ智の子供を産んであげられない。)

【こんな女に、渡しても良いって、本当に思ってるの?】

(だって、そうするしか・・・。綾橋の為には・・・。)

【綾橋の為?笑わせないで。あなたは怖くて逃げてるだけ。彼に嫌われるのが怖くて逃げてるだけなのよ。】

(そうよ、それがいけない事だって言うの!?)

 声なき声は、私の中で高らかに笑い、そしてその真っ赤な唇を吊り上げ、私に歌い掛けるように私の耳元で囁いた。

【盗られるわよ?今度こそ、永遠に。それで本当に良いの?吉乃。】

 名前を呼ばれた様な気がして、乱れて苦しい呼吸を何とか整えていた私は、その声がする方へ目を向けた。
 
 そこには、他の人からしてみれば、何もない空間にしか見えなかった。

 けど。

 私には、どろりとした、得体の知れない、不気味で黒い靄に包まれたもう一人の私がいて、いるように見えていて、そのもう一人の私は、脚を優雅に組み、蠱惑的な笑みを浮かべ、暗い闇を背負い、椅子に座っているかのような姿勢で、ふわふわと浮かんでいた。

 もう一人の私は、私を憐れむのではなく、私が無意識の内に避け、逃げていた本音を、容赦なく私に突き付けてくる。

【恐いのよね?また棄てられるのが。菜々宮の家みたいに利用されるだけ利用され、捨てられるのが。でも、今戦わなかったら、またあなたは逃げて、戦わないのよ。今戦わないで、いつ戦うのよ。貴女《わたし》はいつも逃げてるだけだった。やっと、幸せになる為に巡り逢えた人なのに。貴女は自分の精神《ココロ》を守る為だけに、その人を捨てようとしているのよ。】

 それでも本当に諦めきれるのなら、離婚するのね。

 そう呟くと、もう一人の私は泡のように弾けて、それと同時に黒い靄も消え失せていた。
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