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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-2-7 欠片をもとめて①

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 私は限りなく卑怯で、意気地がないのかもしれない。


 

 さらり、さらり。

 深い眠りに付いている二人の髪を撫でる手を止め、窓辺に近付き、カーテンをそっと開けてみる。
 
 まだ完全に夜は明けてはないけど、こればかりは仕方がない。

 長い髪をポニーテールで一纏めにし、鞄を持ち、静に寝室を出る。

(ごめんなさい、良い夢を・・・。)

 今、私がこれからしようとしている事は、誰からも理解されないかもしれない。だけど、どうしても知りたいし、自分で決めた事だから、止められても出ていく。

 時間が残っている間に知っておきたい、と言うより、後悔したくないから、今、動かなければならない。

 足音を忍ばせ、玄関の鍵を開け、ひっそりっと綾橋の家を出る。
 と、そこで、綾橋家が飼育している犬のドーベルマンが、私の気配を察知し、ムクリと頭をあげた。でも、私が唇の前で人差し指を立てると、ふいっと目を逸らし、尻尾を振って見逃してくれた。

 心の中で見逃してくれたスピネル(犬の名前)に感謝しながら、一歩、また一歩と、歩を進める。

 向かう先は決まっている。

 入院中、意図せずして見て、知ってしまった建川先生の前の奥さんの写真。
 似ているというだけでは、決して済まされない顔だった。

 もう、戦う前から、真実を知る前から、戦わずして逃げるのは止めた。
 だから私は確かめに、逢いに行ってみようと、前から決めていた。
 それが今日になってしまったのは、少なからず昨日の昼の事が影響している。
 
 あれだけ顔と雰囲気が似ているのであれば、と。

 嫉妬と悲しみの中で芽生えたのは、動揺だけではなかった。
 無性に知りたくなってしまったのだ。
 私の母親は、一体どんな人だったのだろう、と。

 菜々宮の家族と血が繋がっていないのは、過去にDNA鑑定で検査し、家族ではない事が立証された。

 建川先生や智、綾橋の家族にはまだ伝えてはないけれど、私は密かに紘人さんに協力して貰い、先生の髪の毛を入手して貰い、DNA鑑定に2週間位前に出していた。その検査結果も、近々届くはず。

 恐らく、十中八九建川先生は私の父親だろう。
 残るは、彼女だけ・・・。

「待っていて、逢いに行くから・・・。」

 私の独り言は、誰にも聞かれる事無く、夜明け前の空に吸い込まれ、消えていった。


* 

 建川先生の奥さんの御墓は、ひっそりとしていて、それでいて雑草や木の根、蔓や蔦で覆われていて、荒れていて、整備されていなかった。

(どうして、こんなに荒れてるの・・・?)

 建川先生のあの話振りからしてみても、このお墓の状況がそぐ合わない気がする。

 腕を翳し、空を見上げ太陽は既に中天にある。
 
 長野行きの新幹線の始発に乗れた所までは良かった。
 だけど私は半ば突発的に行動し、出てきたせいか、情報はあまり持っていなかったし、こちらに知人もいる訳でもなかった。

 それでも、何とかこの墓地がある御寺に辿り着けたのは、入院中に度々お見舞いに来てくれた建川先生に、それとなく御墓のある場所を聞き出し、それを覚えていたから。

 結果、市内を暫くウロウロした私は、駅前でタクシーを拾い、このお寺の名前を言って乗せて来て貰った。

 私の右手には、タクシーに乗る前に買った百合と菊の花束、そして左手には、水が入った桶と、その水を汲む柄杓がそれぞれある。

 荒れた墓を前にして、私はどうするべきか迷った。

 このまま引き返すのもアレだが、掃除するにも道具がいる。
 一端、市内に引き返そうかと、思い直したその時。

「あら、珍しい。香也乃ちゃんの処にお客様なんて・・・。」

 如何にも優しげで、穏やかそうなご婦人の、珍しげな声が聴こえ、私はそのご婦人の方に目を向けた。

 そのご婦人は、私の意外と近くに立っていて、私が自分を見ている事に気付くと、ふんわりと微笑んだ。

 そして。

「あらら、貴女、平さんの処の香也乃ちゃんにそっくりね。もしかして、香也乃ちゃんの親戚かお知り合い?」

 香也乃ちゃん、平さん、と、親しげに言って、問うてくるご婦人に、私はポロリと、まだ調べても、確かめてもないのに、想いを言葉にし、発していた。

「母です!!ずっと探してた母です。その母の御墓がどうしてっ・・・。」

 どうしてこんなに荒れているのだろう。
 誰にも見向きもされず、手入れもされておらず、墓石には苔が生えてる所も見受けられる。
 これでは朽ちてしまう寸前だ。

(酷い、これじゃあ可哀想過ぎる。)

 人は二度死ぬと良く言う。

 一度目は命の灯が消えた時。
 そして二度目が、人の心から消え去ってしまった時。

 ならば、香也乃さんは、私の母は、もう二度死んだことになる。

 改めて墓を見て、そう思った時、私は近くに立っていたご婦人に、躊躇う事なく、頭を下げていた。
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