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Si je tombe dans l'amour avec vous

C-2-5 心の鍵①

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どうして幸せな時間は続かないのだろう。

 

 頭と心の中を駆け巡り、恐ろしい程の速さで蝕んでいくのは、醜い想いと感情。

 物分かりのよい妻として、理解のある妻として、智が他の女といた事も問い詰めたりせず、智が自分から話してくれるまで待とうと決め、受け入れたのに。
 智の過去に何があろうとも拘らない、構わない、と思っていたのに。

 けれど、それは私の痩せ我慢と虚勢、醜い心を隠すためのプライドだった。

 私はいつの間に、こんなにも嫉妬深い女に成り下がっていたのだろう。類の時でさえこんなには苦しまなかったし、心は乱れなかった。

(どうして、どうして、どうしてなの、智!!)

 考えても、譬え自問自答を繰り返した所でも、答えが出たり、返ってくるわけではない事は理解している。それでもそれをやめられない。

 鞄をソファーに放り投げ、大きなベッドにころりと横になり、身体を猫のように丸める。

 普段使われていない客室のベットは、いきなりの重力で驚いたのか、ギシッ、と、軋む音を立てた。

 私はそれに構うことなく、目を閉じた。
 目を閉じれば思い出すのは、あの光景。
 あの光景がどうしても目に焼きつき、思い出したくもないのに、勝手に思い出す。
 それが苦しくて、悔しくて、切なくて、変になりそうだった。

 幸せそうで、お似合いの夫婦で、家族。

(あの子、まなちゃんも、可愛かった・・・。)

 悶々とした気分のまま、私はずっとそうして横になっていて、いつの間にか眠り込んでしまっていた。そうと判ったのは、誰かに身体を揺さぶられていてから。

 私を起こそうとしている人は小柄なのか、手が小さかった。もしかしたら子供かもしれなかった。

(この家に、子供はいない・・・。)

 私は子供という可能性を打ち消し、そろそろと薄い瞼を開けた。すると、そこにいたのは、見覚えのある小さな子で、何故か不安そうにしていて、今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。

(名前は確か・・・、)

 喉まで出かかっているのに、名前が中々するりと出てこない。
 そんな私を、小さな女の子は、不安混じりの声で私の事を気遣ってくれた。

「よしのお姉ちゃん、だいじょーぶ?あやめのこと、わかる?」

(そうだった、あやめちゃんだった。)

 細く、白い左手を伸ばし、あやめちゃんの真っ黒な艶々とした長い髪を優しく撫でる。

 あやめちゃんは、紘人さんのお姉さんの子供で、良く綾橋の家に遊びに来る。と言うのも、咲田家が綾橋家の分家だから。

「おねえちゃん、ぐあいわるいの?おなか、いたいの?」

 あやめちゃんの不安げな声や、眼差しは、素直に嬉しく感じられるし、申し訳なくも感じる。

(何やってるの、相手は子供なのに。)

 大人が子供に心配を掛けてはいけない。いつでも守ってあげなくてはいけない、と、短大生時代に習ったし、現場でも教わった。

 小さな子に心配を掛けたくなくて、私はまた、無意識に心に仮面をつけ、カチリと、心の鍵のダイヤルを回した。

「大丈夫よ、あやめちゃん。少し疲れて寝てただけだから。智お兄ちゃんには会った?」

「うんっ!!いま、おふろにはいってるよ?すごくあせかいてて、ひとりでかえってきたから、ママとりいちゃんにおこられてた。」

 きっと、探してくれたんだろう。誰でもいきなりいなくなれば必死で探す。
 
 探さない人がいるとすれば、最初からその人に対し、何ら感情を抱いていないか、捨てる事を決めているかだ。

(嫌気がさすわ。)

 心配すると知りつつ、浅はかな行動をとってしまった自分が嫌になる。

「おねえちゃん、ママがおねえちゃんとおはなししたいんだって。りいちゃんもまってるよ?」

 自己嫌悪に駆られている私の指を、あやめちゃんはその小さな手できゅっと握り、私の顔を見つめた。

 そのあやめちゃんの瞳は、うるうると涙で潤んでいて、私はまた申し訳なく感じた。

 私はそれを何とかしたくて、身体を起こし、ベットから降り、軽く身繕いしながら、私は明るく言った。

「じゃあ行こうか。お腹もすいたし。あやめちゃんはご飯食べた?」

 あやめちゃんの小さな手と手を繋ぎ、一歩一歩、階段をゆっくり降り、リビングに着いた私とあやめちゃんは、そこでお風呂から上がったばかりの智と鉢合わせした。

 ついさっきまで後ろめたく感じていたのに、智の顔を見た途端、私の心はまた静かに、私が知らない内に、カチリ、カチリと、ダイヤルを回し始め、頑なになり始めていた。
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